古きを學び、新しきを賞する中にも....

 されば、古きを學び、新しきを賞する中にも、全く、風流を邪[よこしま]にすることなかれ。ただ、言葉賤[いや]しからずして、姿幽玄ならんを、(承[う]けたる)達人とは申すべきか。先づ、(この)道に至らんと思はん者は、非道を行ずべからず。ただし、歌道は風月延年[ふげつえんねん]の飾りなれば、もつともこれを用ふべし。およそ、若年より以来[このかた]、見聞き及ぶところの稽古の條々、大概注[しる]し置くところなり。
-『風姿花伝世阿弥岩波文庫)風姿花傳序より一部抜粋 -