inclusive design workshop with Re:Creator's Kansai


*画質が粗いです。

 やっと、報告がまとまりました。できました。時間かかりましたwでも、じっくりと見つめなおしたかった部分もありましたので...とりあえず、参加の報告を掲載します。結構、長くなりましたが。
 11月19日*1は、Re:Creator's Kansai (リクリ)の『http://www.re-creators.jp/inclusive/200811/』に参加してきました。今まで学生時代から現在まで、さまざまなワークショップに参加しにいきましたが、こういうデザインに関するワークショップは、個人的には一番好きなのです。どのようなワークショップであるかは、こちらでもご紹介させていただきましたので、確認したいかたはこちらでご確認ください。

 今回のテーマは【携帯電話】。最初に京都大学総合博物館 塩瀬准教授による今回の趣旨や"inclusive design"とは何か、というお話やこれまでのinclusive design unit.の活動を伺い、今回の進め方について、説明をいただきました。5つの班に分かれて、各班のリードユーザーとして目の見えない方や車イスの方から伺った内容から気づいたことをとりあえずシンプルに付箋に書き出していき、それらを集めてアイデアを一般化してイラストスケッチを描いていき、さまざまな材料を使って、プロトタイプを作って、それをもとにプレゼンを行うという流れでした。

今回のワークショップの流れ

  1. 気づいたことを付箋に書き出していく。
  2. これらの付箋を集めて、共有(一般化)し、アイデアをイラストへと落とし込んでいく。
  3. 実物大のプロトタイプを作って、カタチにする。
  4. プレゼンテーションを行い、説明をする。

☆同じ班で参加された皆さんのブログ記事も見てくださいね。
http://blog.tommmmy.com/2008/11/ws.html
[レポ]インクルーシブデザインワークショップ - E-riverstyle Vanguard

 続きでは、デザインについて考察をしたり、詳しいアプローチに関しても、少し触れてみたいと思います。

デザインとは何か

 まずは「インクルーシブデザイン」に関する前に、デザインに関してのことを少し勉強してみたいと思います。「デザイン」と一言でいっても、さまざまなデザインがあります。工業、建築、商業、印刷などなど様々な分野でのデザインがあり、大辞泉を調べてみると、次のようにデザインは定義されています。

「デザイン」

  1. 建築・工業製品・服飾・商業美術などの分野で、実用面などを考慮して造形作品を意匠すること。「都市を―する」「制服を―する」「インテリア―」
  2. 図案や模様を考案すること。また、そのもの。「家具に―を施す」「商標を―する」
  3. 目的をもって具体的に立案・設計すること。「快適な生活を―する」

大辞泉より引用

 それぞれに意味合いはあると思いますが、その多くは1で定義されているように実用面が考慮されているように感じます。その根拠となるのが、デザインの語源からは「ある問題を解決するために思考・概念の組み立てを行い、それを様々な媒体に応じて表現することと解される。(wikipedia"デザイン"より)」と示されています。この事から、デザインは"問題を解決する機能"を有している表現法といえるのかなと思います。その部分を少し中心に考えを進めてみたいと思います。

インクルーシブデザインとは。

 今回、行われたワークショップであるメインテーマ「インクルーシブデザイン」。では、近年デザインで様々な言葉があるのですが、それとどう違うのでしょうか?

インクルーシブデザイン

 インクルーシブデザインとは高齢者や障害のある人など、特別なニーズを抱えた消費者をデザインプロセスの上流工程へと積極的に巻き込んでいく手法です。インクルーシブデザインの世界的研究センターを抱えるイギリスの英国王立芸術学院(Royal College of Art)では、市民団体やNPOらと積極的に協創的関係を築き、特別なニーズを抱えた消費者が引け目を感じることのないよう、市場のメインストリームを占めることができるデザインへと結実する相互学習過程として期待されています。
http://www.symlab.sys.i.kyoto-u.ac.jp/incl/より一部抜粋

 では、以前、このブログでも取り扱ったユニバーサルデザイン(UD記事が進めなくてすいません...)とは、どのように違いがあるのでしょうか?

ユニバーサルデザイン

 文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障害・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計(デザイン)をいう。
ユニバーサルデザイン - Wikipediaから一部抜粋

 比べてみると、一目瞭然です。ユニバーサルデザインの対象は『とても広い範囲(文化・言語・国籍・老若男女・障害・能力における差異)を対象として、その差異を問わずに利用することができるデザインをすること』に対して、インクルーシブデザインは、高齢者や障害のある人などの特別なニーズを持つ人々をデザイン過程にまで巻き込んでいくというデザイン手法をとります。これは新しい分野ではなく、デザインとしての自然な流れであり、社会的平等への道筋だけではなく、新たなビジネスの機会として捉えられている手法であるといえます。これらを基本的な部分に頭に置いといて、今回のワークショップをご報告。

で、どんなことしたの?

 実際にワークショップではどんな事をしたの?というのをつづっていきましょう。今回、まずはしょっぱな遅れてのスタート。初めにもご紹介したとおり、インクルーシブデザインユニットの京都大学総合博物館 塩瀬准教授による説明。そのあと、すぐにワークショップの実習へと移ります。テーマは【携帯電話】。もともとこの分野には少しだけかじっていたこともありまして*2、非常に興味深く、また楽しかったものであります。

 まずは、簡単な自己紹介で皆さんのあだ名などの話した上で、実際にワークショップがはじまりました。上記の流れの通り「気づく」という事から始まります。リードユーザーさんにヒアリング*3をおこなって、その都度、気づいたことを次々と付箋へと書き出していきます。我々の班のリードユーザーさんは弱視の方でした。リードユーザーさんから伺った話の中から、生活での携帯電話の使い方などで我々の班で気づいたことをまとめて、一般化した部分をまとめておきます。*4

■携帯利用の外観部

  • 携帯電話は読み上げ(音声ナビ)を多用する
  • 携帯電話はシンプルフォン系を利用
  • 二つ折りスタイルよりスライドのほうが使い勝手は良い。
  • 軽いほうがよいが、落とした時に気付かない時があるかもしれない。

■メール機能など

  • メールはメモ代わりに利用する
  • メールを受信したときに漢字で書かれた文章は、意図とは違った文字読みを行う(ex:今鶴橋→こんかくきょう)など。
  • そのために、常にひらがなで入力をしている。
  • 辞書の機能が充実してくれるとよい

■各部機能について

  • ボタンを押し間違えることがある(ex:"戻る"ボタンが他のボタンと押し間違える,数字のボタンが"5"を中心として探らなければ分かりづらいなど)
  • ボタンが小さい
  • 側面のサブボタンは、読み上げ以外は使わない。
  • 利用しているうちに間違ってボタンを押して、自分専用の機能設定にしていたのに、初期設定に戻ってしまうことがある。

■web利用など

  • webなどの画面を読むときには、ルーペを使って読んでいる。
  • 現在地を詳細に教えてくれる地図ナビゲーションが欲しい。

■充電について

  • 充電の残り時間は確認したことはない。
  • その代りに習慣として、起きてから出かけるまでに充電機で充電を行う。

■生活習慣の面で
携帯を自宅で失くした時にどこに行ったのかわからなくなる。

 ここで、一般化された内容を、今度はこれらをアイデアとして、デザインに落とし込んでいきます。実際にそれを描いていくことになるわけですが、プロトタイプを作っていく上で、まずは実際に会場に用意されていた携帯電話の店頭模型(通称:モック)を数パターン用意して、実際にリードユーザーさんに触ってもらって、どれが一番使いやすいかを評価して、いただきました。今回、われわれの班が選んだのは、画面が大きいほうがいいという意見も考慮して、下記の形の形状を選びました。


●選んだ理由

  • 大きなディスプレイであること。
  • ロングスライドであること。
  • 形状の面からアイデアを落とし込んでいく改良の余地のある商品であること

 そして、ソフトの面とハードの面でアイデアを分けて、どのように落とし込んでいくか議論しました。

▼ソフト面

  • ファンクション機能として、間違って設定が変わってしまっても、自分設定に戻せるような機能を入れてほしいという点
  • 位置情報における詳細なナビゲーションの充実化
  • 携帯電話を室内に落としても、所有者の声によって、反応する携帯機能(ex:所有者が「おーい」というと、携帯が音声で「はーい」とか返事をしてくれる機能)
  • 「戻る」「電源off」「電源on」の音声機能
  • 自分設定に戻すことのできる機能。
  • web終了やメール終了などを電源offボタンに統一させる。
  • 辞書機能の充実化

◆ハード面

  • どちらが表面か裏面かが分かるように、スライド上部(ディスプレイ面)の下部に少し凹部を作る(→携帯電話の表と下部上部の区別)
  • ボタンの大きさを大きくすること(→押し間違いを防ぐ)
  • 奇数番号(1・3・5・7・9)と十字キー中央部の決定ボタン*5に凸部をつける(→これにより数字キーの位置を把握し、押し間違いを防ぐ)
  • 「電源off」「戻る」「電源on」のボタンの分かりやすい形状を変える(→数字キーとの押し間違いを防ぐとともに、「戻る」ボタンの押し間違いも防ぐ)
  • 読み上げ専用ボタンは、端末「側面」部のサブボタンに特化させる(→押し間違いを防ぐ。また、この位置のほうが押しやすい)
  • イヤフォンを内蔵(→ラジオなどの内臓にも機能するし、音声読み上げを他人に聞かれることなく確認することができるから。)

 最初は、紙粘土で作っていこうかとも思いましたが、ボール紙を使おうという意見が出てきたので、試行錯誤してモックに機能を足していくのではなく、大きめで良いので、作っていこうということに。そして、そのプロトタイプがこちら。


*写真が少し黄色めにしているのは、私の意図的なものなので、気にしないでください。

 先ほどのアイデアの部分を基本的に落とし込んだ形なのですが、まず特徴的な部分は、数字キーの部分。奇数に凸を入れることで、どこの数字を押しているのかという数字キーの配列がわかるという点です。目に頼る情報も重要なのですが、触ることによる情報で、より確実に押し間違いを防ぐことができると思います。特に、奇数の数字キーに凸を入れるとよくわかるという、リードユーザーさんの提案からの解決部です。

 次に「戻る」と「電源off」「電源on」の部分の形状を変えたこと。従来の配列なら、数字キーとこれらの部分は形状が同じでした。ですから、この形状を「戻る」は▽に、「電源offとon」は直角三角形の右向き、左向きに変えることで、塩瀬先生がコメントをくださった通り、見なくても、指である程度なぞるだけで機能がわかるようになっているという点です。これは、配列上の観点から行くと、on / offは直角三角形でなくても、台形などの差異を使うとより明確になるかもしれません。

 上部は、数字キーや決定キーに凸部を作ったので、少しディスプレイをブリッジ状にすることになると思います。これは、現状で流通している機種でも、ブリッジ状のものがありますので、可能かと思います。またディスプレイ下部に凹を入れるというのは、今回は切り込んでいますが、イメージ的には凹みを加えるということです。

 あと側面に読み上げ用のボタンを付けております。これは、従来でもありますので、機能強調からつけておきました。そして、その側部から内蔵型の巻き取り式イヤフォンが取り出せるようになったデザインを仕上げました。

感想

 今回のワークショップは、本当にモノづくりの原点を一から感じたデザインの勉強であったと思いました。なにより大切に感じたことは、我々が一斉に色んな質問や意見を投げかけても、話が散雑する訳で。となると、どこにアプロチーをかけていくかというのは、参加者それぞれが意識を持って、アプローチをかけていくことにも、自身の在り方を感じました。

 また、デザインのアプローチに関しては、やはりプロトタイプを作るに当たっては、何か既存のものからうまくデザインを構築していくというところとソフト面をいかにデザインに落とし込んでいくかという点では、とても苦労する部分を感じました。どちらかをとれば、どちらかを削らなくてはならないという部分も、実際に作っていく上では、起きてくる問題だと思います。どこに焦点を絞っておくかはデザインを行う上で、大切ではないかと思いました。

 そして、デザインを行うにあたって、そのデザインの要所に機能を持たせることを少し意識してみましたが、そこに落とし込んでいくあたり、まだ改良の余地があるのでは?と突き詰めてみると、また新しい発想が出てきたことでも、とても有意義なワークショップでありました。

 一緒にワークショップをさせていただいた皆さん、誠にありがとうございました。そして、リードユーザーの皆さん、塩瀬准教授、世話役の小嶋新さん、各班のファシリテーターの皆さんもお疲れ様でした。

最後に

 今回、同じ班だった方や他の班の参加者の方々のレポートも下記にリンクしていきますので良ければ、TBしていただけると嬉しいです。こんなアプローチをされていたんだとか、色んな意見を見たいものでして。宜しくお願いします。(上記と重複あり)

■Re:Crexinclusive design workshop報告関連


*追記

  • 記述に関しての注釈を一部補いました。〔08.12.01〕

*1:当初、「昨日は」と書いていましたが、ちょこちょこ綴っていたので、公開がだいぶ遅くなりました

*2:いや、本当はどっぷりこの分野の人間だったんですよw一応、もう離れているので

*3:ヒアリング」という表現には、少し疑問符が付くと感じます。どちらかというと、『対話』に近いと思います。「ヒアリング」とは基本的に顧客(消費者) to 販売者(企業)というイメージが強い。むしろ、同じ立場なので、『対話』ということばのほうがしっくりと来るように思います。

*4:ここでの一般化とは、言葉の表現によって、同じことを表していたこととか、リードユーザーさんと参加者の中での共通認識とすることを『一般化』としています。

*5:機種によっては"F"ボタン