ひとにおける思考性

 最近、森博嗣氏のS&Mシリーズを読み返すようになってあることを考えるようになった。それは『ひとにおける思考性』である。本書で主人公となる"西之園萌絵"と"犀川創平"の思考性が、それぞれアプローチが違うのだが、とても興味深い。wikipediaにて説明されているように"西之園萌絵"は「与えられた材料から全ての可能性をしらみつぶしに計算するタイプ」である。この可能性はどうか?あの方法ならどうか?というあらゆるアプローチから導いていこうとする姿勢が、シリーズで垣間見れる。それに対し"犀川創平"は「まず考える対象や方向性を定めてからそれを集中して考察し、結論を得るタイプ」であり、こういう方向で行くと、論理的に解決に出来そうだという見通しを先に見出してから、その筋道を開拓していき、線と線を結んでいくという方法を取る。

 個人的に思考性がどちらに似ているかというのであれば、どちらかというと"西之園萌絵"側の思考性だといえる。事実とした証拠をもとにあらゆる可能性をアプローチしていくという考え方のほうが強い。しかし、ここ最近は、本書を深読みし始めて、"犀川創平"的な指向性も持つようになってきた。頭の中でストーリーの方向性を持っていると、結論へのプロセスがそのストーリーの確実性を高めていくように感じる。もちろん、思考実験を繰り返すことで、結論に近づけていくことにはなるのだが。

 自分の思考性について、いろいろと考えてみると、自分を見つめなおす一つのきっかけのように感じる。つまりは、自分の成長の変遷を感じることができるのだが、ひとの思考性というところにも、目を向けてみるとまた自分を自身へフィードバックしていけるのでは、ないかと感じる。